「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(2)

「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(2)

 2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(略称は、障害者差別解消法)」が施行されました。  この法律では、「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求め、そのことによって、障害のある人もない人も共に暮らせる社会を目指しています。


板橋区医師会のホームページ

 板橋区の人口は約55万7000人(2016年12月1日現在)と、私の故郷であり、もっとも人口の少ない鳥取県(約56万9000人=2016年11月推計)にほぼ匹敵する。
 板橋区は、JRの駅は埼京線の板橋駅の一部が区内をかすめるだけで、鉄道は東武線、都営地下鉄三田線、地下鉄有楽町線が、北西から都心の南東に向けて、ほぼ平行に走っている。主要道路も、中山道(国道17号線)と川越街道(国道254号線)が、同じく北西から南東に走り、それらを環状七号線が交差している。このように、板橋区には、都会的な繁華街もなければ、交通の要衝でもない。
 その板橋区が、日経新聞の「シニアにやさしい街」調査で「医療・介護偏差値」の5位(総合ランキングでは1位)に選ばれたのは、区内の医療機関とも大きな関係がある。

 医療機関の種類について、あらかじめ説明しておくと――、
・一次医療機関:かかりつけ医のように、軽度の症状の患者に対応。
・二次医療機関:かかりつけ医では扱えない病気や手術、入院が必要な患者に対応。
・三次医療機関:二次医療機関で対応できない、脳卒中、心筋梗塞、頭部損傷などの重篤な患者に対応する高度な医療機関。

 板橋区には、東京都健康長寿医療センターと帝京大学医学部附属病院、日本大学医学部附属板橋病院という高度の三次医療機関がある。
 ただし、三次医療機関が多いから、住民が医療面で充実しているかというと、そうではない。現在の医療制度では、三か月以上の長期入院はむずかしくなっていて、国が長期療養者や病気の高齢者に在宅医療を勧めていることもあって、一次~三次の医療機関がバランスよく配置されていて、より高度な医療を受ける場合にも、逆に回復期を迎える場合にも、医療連携がスムーズに行われる必要がある。
 都内23区には、板橋区よりも三次医療機関が多い区もあるが、一次・二次医療機関が少ないために、とくに病気をもつ高齢者が、“医療難民”のようになっていて、区外の医療施設に移るケースもあるという。

 その点、板橋区では、一次~三次の医療機関がバランスよく配置されている。そして、それら医療機関の連携をスムーズにしている大きな理由のひとつは、板橋区医師会が“扇の要”になっていることにある。
 板橋区医師会は、医師会立の板橋区医師会病院を運営していて、そこに、准看護婦を養成する板橋区医師会立看護高等専修学校を併設している。

 知人の元板橋区医師会会長は、「同校出身の准看護婦が、区内の大学病院や中小病院、開業医で活躍しているので、区内の医療機関の風通しがいい」と話していた。
 休日診療や救急患者を大病院に押しつけないためにも、「休日・救急・夜間診療」を実施したり、「板橋区平日夜間応急こどもクリニック」も実施している。
 それらの中でも特筆的な取組みは、板橋区医師会医学会を毎年9月に開催して、区内を中心に産・官・学・民のあらゆる医療関係者や有志が集まって、医療問題や医療に関係する社会問題を扱っていることである。医師会で医学会を開催しているのは、板橋区以外には知らない。この取組みは、1996年に始まって、21回を数える。

第21回板橋区医師会医学会のポスター

 たとえば、2016年9月10日~11日の第21回板橋区医師会医学会では、10日(土)の医療関係者対象医学会は378名が参加し、翌11日(日)の区民公開講座には790名が参加するという盛況だった。
 医療関係者対象医学会には、医師ばかりではなく、看護師、療法士、区、消防、警察、医療研究機関、NPO、ジャーナリスト、医療関係民間企業……が参加するので、別の機会で災害対策の会合が開かれても、顔見知りになっているので、話がスムーズに進むという利点がある。さらに、医療情報を公開講座として区民にわかりやすく情報提供しているので、区民の意識も高い。

 医療関係者対象医学会のテーマは「癌の予防・早期発見・治療・リハビリ・終末期」。区内の医療関係者88チームが口演を行っている。
 また、区民公開講座でのテーマは「認知症になっても安心して暮らすために」。9月11日(日)の午前中には、認知症の実話をもとにした映画の上映のあとで、シンポジウム「認知症を地域が支える。みんなで支える」を開催した。

2016年に開催された板橋区医師会医学会の区民公開講座のシンポジウム

 そのシンポジウムの内容が充実している。
 一、基調講演「認知症とともに生きる社会に向けて」 栗田主一・東京都健康長寿医療センター研究所研究部長
 二、対談講演「認知症とともに、よりよく生きる」 対談者は、佐藤雅彦・認知症とともに歩む本人の会代表と水谷桂子・NPO法人認知症当事者の会
 三、活動紹介
・「地域包括センター:住み慣れた地域での生活を支援」 田畑文子・高島平地域包括センター所長
・「かかりつけ医としての支援:もの忘れ相談医、認知症初期集中支援チーム」 佐藤恵・認知症サポート医
・「地域の支え合いをすすめる区民参加の取り組み」 廣瀬カズ子・特定非営利活動法人ボランティア・市民活動学習推進センターいたばし理事長
 四、ディスカッション

 このような内容を見るだけでも、板橋区では高齢者に多い認知症の患者を、住民が区や医療機関ととともに見守ろうとしている「配慮」がある。

 こんな高齢者を大切にする板橋区に、住みたいと思う障害者の方もいるのではないだろうか。

この記事のライター

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