「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(1)

「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(1)

 2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(略称は、障害者差別解消法)」が施行されました。  この法律では、「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求め、そのことによって、障害のある人もない人も共に暮らせる社会を目指しています。


「障害者差別解消法」を説明する内閣府のパンフレット

 2020年の東京オリンピックとパラリンピックをきっかけに、障害がある人たちへの対応やバリアフリーの街作りについての議論が活発になっている。
 前回の東京パラリンピック(1964年)では、日本を訪れた欧米の選手たちが、恋やファッション、飲食などを健常者と同様に楽しんでいるのを日本人の大会関係者が見て、大変驚いたという逸話がある。それほどに、日本は欧米と比較して、障害者への対策が遅れていたのだ。

 障害者対策を加速させるように、2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(略称は、障害者差別解消法)」が施行された。この法律の目的を、内閣府は次のように説明している。
〈この法律では「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求めています。そのことによって、障害のある人もない人も共に暮らせる社会を目指しています〉
 この法律で定義される「障害者」とは、障害手帳をもっている人だけに限らない。身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人、発達障害のある人、障害児、その他の心や体のはたらきに障害あるなど、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてに対象が広げられていた。
 法律で禁止されている「差別」とは、次のようなものだ。

・会社や団体などでの受付の対応を拒否。
・医療機関等で、本人を無視して、介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかける。
・学校の受験や入学を拒否する。
・不動産屋等で、「障害者向け物件はない」と言って対応しない。
・飲食店等で、保護者や介助者が一緒にいないと入店を断られる。

 これらの行為は「不当な差別的取扱い」として禁止。さらに、障害のある人から何らかの対応を必要としているという意思が伝えられたときは、国民は負担が重すぎない範囲で対応することが求められ、事業者は対応につとめなければならない。これらの対応が、法律に盛り込まれた「合理的配慮の提供」である。
 もし、事業者が障害者の権利を侵害して、差別的な対応を改めないときには、「20万円以下の過料」が課せられるという点でも画期的な内容になっている。

 障害には、先天的なものと後天的なものがある。いずれの場合も、本人が望まないのに障害が生じてしまうった。健常な人にとってもは、障害は“明日は我が身”でもあり、お互いさまなのだ。それ以前に、障害を理由に、人が人を差別する理由などない。
 逆に、障害者に配慮がある社会は、健常者にとっても生きやすい。障害者にやさしい街とは、人間がおたがいを尊重する、成熟した社会なのだ。

 では、「障害者にやさしい街」とは、具体的にどのような街なのだろうか。
「障害者」と認定されると、国や地方自治体から、各種手当てや補助金、障害者年金やマル優、生命保険などの優遇措置、交通機関を利用する際の補助などが、本人や保護者、家族に支給される。
 また、企業は、一定の割合で障害者を雇用すると、税制優遇措置を受けられる。
障害者にとって、手当てや補助金は、生活するには十分な額ではないだろうし、就職率も決して高くはない。それでも、国や自治体は手を差し伸べようとしている姿勢は感じられる。

 ただ、私はそうした公的支援に加えて、環境面やソフト面からも障害者にとって住みやすい街を考えてみたい。そうするうちに、障害者が住みやすいと感じるバロメーターは、高齢者の感じる住みやすさと同じではないかと思うようになった。というのは、高齢になると、視野が狭くなったり、耳が聞こえにくくなったり、体に重りをつけたように動きにくくなったり、判断も遅くなったりと、体の不自由を感じる人が多いからだ。
 バリアフリーや使いやすいお手洗いなどのハード面も大切だが、それ以上に大切なのは、「何かお困りですか」「よかったら、お手伝いしましょうか」と声がけをする自主的な「配慮」なのではないか。そのように、社会的弱者である高齢者にやさしい街は、きっと障害者にもやさしいに違いない。

日経新聞社の「シニアにやさしい街 総合ランキング」のホームページ

 資料を探していると、日本経済新聞が「シニアにやさしい街 総合ランキング」(2014年12月~2015年1月調査)というデータを見つけた。これは、「医療・介護偏差値」「生活支援・予防偏差値」「認知症対策偏差値」「社会参加偏差値」を評価したものである。
 それによると、総合偏差値の1位は「東京都板橋区」だった。たしかに、財政的に比較的余裕のある大都市は、医療・介護などをはじめとする高齢者への配慮に厚い。そのせいか、3位「東京都新宿区」、4位「同荒川区」と23区が上位に入っている。
 しかし、2位は「栃木県小山市」、5位は「石川県能美市」がランクインしているように、高齢者にやさしい街は地方にもある。

 この日経新聞のデータを見つけたとき、私は、板橋区医師会の元会長から聞いた話を思い出した。板橋区では、区が医師会や研究機関、公的・民間団体とともに、産・官・学が一体となって、高齢者対策を行っていることを思い出したのだ。
 その取組みをここで紹介したい。

この記事のライター

関連する投稿


「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(3)

「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(3)

 2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(略称は、障害者差別解消法)」が施行されました。  この法律では、「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求め、そのことによって、障害のある人もない人も共に暮らせる社会を目指しています。


「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(2)

「高齢者にやさしい街は、障害者にもやさしい ――健康長寿のために」 河﨑貴一(2)

 2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(略称は、障害者差別解消法)」が施行されました。  この法律では、「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求め、そのことによって、障害のある人もない人も共に暮らせる社会を目指しています。


最新の投稿


  ライフチャレンジ(LC) 2018年3月

ライフチャレンジ(LC) 2018年3月

エンタメ療育では、楽しんで続けていける環境を作り出すことを大切にしております。いくら親御さんがやらせたいといっても、お子さまが気持ちが乗らなければだめです。我々、スタッフはバディ(Buddy)仲間として、一緒になってお子様の成長をサポートさせて頂いております。ライフチャレンジとは、外出レクリエーションになっております。


ジョブチャレンジ(就労体験)プログラム 2018年2月

ジョブチャレンジ(就労体験)プログラム 2018年2月

ジョブチャレンジとは、実際の職場にて、お仕事をして頂きます。 働く上で、必要なスキル(挨拶、パソコンスキルなど)を指導してまいります。 1.自分で職場に行く力を養う 2.挨拶をしっかり行う 3.必要なスキルを身につける 4.何ができるかを見つける 毎月1回からはじめるといいと思います。やればやるだけ力が付きます。


Sさんと行く皆の卒業旅行 2018年2月18日(日)予定

Sさんと行く皆の卒業旅行 2018年2月18日(日)予定

2017年8月に1週間、短期体験学習in USAを行いました。総勢11名で行ったときに参加してくれたしゅうさんは、この3月で高校卒業します。そこでロスアンジェルスに一緒に行ったメンバーで卒業旅行に行こうという計画を立てています。この旅行は、たくとさん、けんたさん、Nにとっても卒業となります。


プール療育 50回目 support by エンタメ療育 継続 あせらず

プール療育 50回目 support by エンタメ療育 継続 あせらず

2016年8月に渡米した時に行った、プールでのトレーニングを現地スタッフが見ていて、声をかけてくれたのがきっかけです。君たちのトレーニングを6か月続ければ歩けるようになる、その話を信じトレーニングを行っています。一年経った今では、10m、183歩、歩行時間5分以上まで歩けるようになっています。継続は力なりです。


ライフチャレンジ(LC) 2018年2月

ライフチャレンジ(LC) 2018年2月

エンタメ療育では、楽しんで続けていける環境を作り出すことを大切にしております。いくら親御さんがやらせたいといっても、お子さまが気持ちが乗らなければだめです。我々、スタッフはバディ(Buddy)仲間として、一緒になってお子様の成長をサポートさせて頂いております。ライフチャレンジとは、外出レクリエーションになっております。